2017年2月26日日曜日

とくとくトーク「見えてること、見えてないこと」第2回「障がいとアート」

とくとくトーク「見えてること、見えてないこと」第2回「障がいとアート」
2017年2月26日(日)18:00 マルチホール
トークゲスト:久保田翠(認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ理事長)
話し案内人:柏木陽(演劇家)

なんとなく敬遠してしまうことってありませんか? 障がいを持っている人との交流とか劇場でなにか見るとかどうしても足が向かない。そんな人にこそ一緒に考えてもらいたいと思います。静岡県浜松市で、「のヴぁ公民館」という場所を運営している久保田さん。障がいを持つ人も持たない人も「ともに居る」事をアートを通して実現しようとしています。なんで障がいを持つ人たちとアートなの? 街なかで突然アヴァンギャルドなイヴェントを障がいを持つ人たちと始めちゃう久保田さんと、障がいとアートのことを考えてみませんか? 


 [考えを深める2月]として、「地域とアート?」「障がいとアート?」といったことについて、考えを深めるトークイベントを行ないました。第2回のゲストは久保田翠さん。「はたちのはなし 発表会」をご覧いただき、そのあとトークを行ないました。お相手は柏木陽さんです。
「自分と息子の居場所。障害者の施設、ではなく、いろんな人がいる場所をつくりたい」


 「〈問題行動〉ではなく〈喜び〉〈表現〉かもしれない」「作品とは思っていなくてもこの人の欲望にとことんつきあうことをやってみた」「関係をつくりたい…とスタッフが福祉の支援をつきつめるうちにこういうものが生まれた」
 「わからないことを渡していく。引き受ける。自分のなかで思考が始まる。そこがアートのすぐれた力では」「障がいのある人の〈存在〉を〈シゴト〉にする。かれらがいることで〈社会〉が変わるかもしれない、そういうシゴト」「差異を見つけて排除する、ではなく、違って当たり前というように。それは、福祉ではなく文化でつくるものなんじゃないかと思っている」

「市民館の〈よりあい劇場〉というのも良いですね。5万人規模の街の、駅からすぐにある劇場。多様な人が来ているのでは?」「わからないことに出会って起こる喜び。〈これなんだろう〉という答えが見えない学び。みんなで考えたりしてそういう話をぐずぐずする場所」
会場には、関係する方、当事者の方、いろいろな方のいろいろな思いがありました。











「文化施設どうあるべき?」という問いに、「だれかと出会って、なにかやろうと生まれてくるものがある。市民が文化芸術に親しむ。劇場が多様な人の居場所をつくったら、そこからクリエイティブな作業が始まるのでは」という言葉。「表現ってまだ大切にされていないし、可能性は開発されていない気がする。だれかが一生懸命やっている、それを発見する人がいる、伝える、それが文化」という言葉が印象的な回でした。

===柏木さんより===
第2回は浜松でクリエイティブサポートレッツの代表として活動する久保田翠さんを迎えて障がいとアートというタイトルでお話をしました。
最初に久保田さんからレッツの17年にわたる活動の概略をお話しいただき会場の方々からご意見をいただきつつ話が進んでいきました。
会場に集まった聴衆の方々の熱い思いを受け止めつつ言葉をさがしていく久保田さん。様々なキーワードが出てきました。「存在することがシゴト」「30分かけて階段を上る」「その人自身(存在)を肯定する」「なんでこんなものを作るのか分からないけど理由はある」
ある方はひどい申し送りをされてレッツに来て、その後ひどいことはしなくなったそうです。久保田さんやレッツで行っていることが万能ではないけれどその人と向き合いながらその人の行動を肯定していこうとする中で彼らが落ち着ける方法を探していく。
障がいの有無関係なく、価値観の異なる他者と対話し、学んだり語り合ったりするような「ともにいる場」をつくっていくことが大事なのだと思った第2回でした。

「はたちのはなし」発表会

はたちのはなし 発表会
2017年2月26日(日)15:30 茅野市民館マルチホール
遊び案内人:柏木陽(NPO法人演劇百貨店代表、演劇家)
出演者:おみつ、カズくん、キモ、清、さよ、タバサ、ちゃむ、ハチ、ひよこ、フミフミ、ぽち、やーさん、やぎ、ゆみ、まきまき、まゆ

人に話を聞いて劇に!?
新成人アンケートを劇に!?

はたちのことって知ってますか?
誰にでも訪れる不思議な時間“はたち”。
毎年、成人式が行われていて
毎年、何人もはたちになって
何があったのか、なかったのか
わからないまま過ぎ去っていきます。
そんな誰にでも訪れるはたちのことを
みんなで取材して考えて
劇にしました。

◎オープニング
はじまります、のダンス
1/7にみんなで集まってアンケートをつくり、1/8に市民館で行われた成人式ではたちを迎えた方々にアンケートをとりました。そしてこの劇をつくりました。
そのほかにも、地域の皆さんに聞いて、かつてと、今と、これからのはたちについて、考えてみました。
それでは、ご覧ください!




◎新成人アンケートをとる前のイメージと実際の劇
成人式でアンケートをとる前はこんなことを考えていたんです…。
(相手にしてもらえないかな…)
でも実際は…?断るのも丁寧。盛り上がってても「いいよ」と応じてくれたり、あとで…って断られたかと思ったけどすっごい連れてきてくれた!
「まじで?うれしい~!」
そして、とってきたアンケートの結果がこんな風になりました。











◎アンケートデータの「見える化」劇
円グラフや某グラフでパーセンテージを見える化。
はたちの皆さんに聞きました!
住んでいるところは?茅野市、それ以外。
同居人は?ひとり、家族、それ以外…。
今、不安なことはありますか?
あるとしたらどんなことですか?
男性→就職、将来、健康、奨学金の変換、社交、今後の人生、食生活、サークルの運営、学校、お金、病気、単位、非常呼集があるかないか、正規雇用、ひとり暮らし、恋愛、家族
女性→仕事、将来、進路、学生になること、卒業できるか、学校、健康、幸せになれるか、人生。
…不安だよねぇ。

◎新成人アンケートから想像する人物像の劇
アンケートのなかで気になった回答「非常呼集」?どんなことなんだろう?
消防団の勧誘。「卒業おめでとう!4月から消防団に入ってもらおうと思ってきました」
「呼び出されるんじゃないかなあ」「火事のとき以外ないから大丈夫!」…友達と飲んでいるとき、サイレンが鳴り(うなり)だした…!
「今後の夢」で、女性の気になる回答が。どんなだろう?と考えてみました。
東京で一人暮らしの女子大生。お金がほしいのでアルバイトをしています。いろんな人生模様が交差します。…実家、帰ろっかな。あ、でも合コン!







◎「はたちについて」聞き書きの劇
そこで、もっといろんな人に話を聞いてみようと、インタビューして聞き書きをしました。
40代女性のはたちのころのはなし
1歳2ヵ月の女の子のお母さんのはなし
酔っぱらったうちのだんなのはなし
茅野市美術館学芸員Nさんのはなし
わたしのむすめのはなし
プロのお笑い芸人を目指す女子高生のはなし
17歳前で職人になったうちの主人46歳のはなし
年金が少ないと嘆いている初老の男性のはなし
会社の同僚 27、28、29歳のはなし
友人Sさん60代のはなし
劇場勤務の24歳女性のはなし
ある演劇部の17歳男子のはなし
リアルはたちの男の子のはなし















◎「はたちのはなし」聞き書きの劇・就労支援施設のはたちの座談会
諏訪の就労支援施設にて、皆さんにお話を聞いてきました。
皆さん、はたちになってうれしかったことはありますか?
毎日、なにをしていますか?
お休みの日とかは、なにしてるのかなあ。
夢、とかありますか?













◎エンディング(自分自身のはたちのはなし)
自分がはたちのときは働いていました。
4年前はたちになりました。
はたちのときは今の主人とつきあってました。
3年後、はたちです。
成人式に遅れていって、だれもいなかった。
……



 これにて「はたちのはなし」終了です。
柏木さん「今回、ワークショップの期間中に市民館で成人式があった。劇場にはたちの人が来るって、もしかしたらそれ1回だけかも。今、はたちの人と話す機会はそんなにない。わたしたちはあなたたちに関心があるよっていうことを伝えるために、アンケートをとって実際に聞きに行ってみた。そして、なにがわかるんだろうと考え、いろいろな人にインタビューしてみた。はたちは、意味はないけれど成人なったっていう線引きをされる年。あなたはどうでした?ということから何か見えてくるかなあ?と。はたちは、なにか起こったら自分で責任をとるようになる年。なんにもないんだけど、通過点として通過しちゃってる我々。そんなことが少しでも考えられるといいなあと思って企画してみました。」

◎振り返り
感想
「聞いてきた言葉・声と、今そこで生きている人の言葉・声と、多重に聞こえてきた。濃かった」
「はたち、ぼんやりしてるんだけど、広い」
「再現シーンの疑似体験は一生忘れられない!」
「本当に楽しくて終わるのがさみしい」
「ワークに前回ちょっと出て、今日午後に来て速効初舞台。今まで裏方だけだったけど初めて演じる側になっておもしろかった」
「参加するまわりの方の話を聞いているうちに、その人自身の人柄とかが見えてきて、いつも一緒にいる高校生とは得られない感覚が毎回得られて、めちゃくちゃ勉強になったしめちゃくちゃ楽しかった」
「脇で見る側にまわったが、去年の御柱の聞き書きをふくめて、そこから膨らませて、具体的にする・つくるパワーが毎回増えてる気がする。去年よりももっと面白かった。演じる側と裏で作る側でまたやりたい」

===柏木さんより===

次へつながる方法を考えてやってきた。今回は聞き書きに加えて数値。数値になってるものの裏側には実は膨大なものがあって、見方をどこで切るかによっていろんな見え方があり、そこからまた何かが見えてくることもある。演劇をつくるつくりかたは一個じゃない。鼻歌うたうみたいに、草野球みたいに演劇を楽しむこともできる。多様な演劇との付き合い方がもっともっとあるはず。そのことがちょっとでも面白いと思ってもらえたらそれだけでOK。
つくったのは3日間だけど、皆さんのあたまのなかにすごい時間かけて仕込んでいるから。前の3年があって、参加した人がほかの人に伝承して、ほかの人にも影響を与えていく。人がプラットフォームになっている。そういうコミュニティ。そのコミュニティのなかでなにかが生まれる。
ダメだしはないけど、ひとつだけ。最後のシーンをなぜ途中でとめたか。理由はテンポわるいから。全員でつくってるとキープできるがひとりになると次への受け渡しに時間がかかる。自分の時間にひっぱられる。他人のための時間にするにはどうするか。自分がどうやろう…となるが違う、そこじゃない。掛け算にする。

「はたちのはなし」発表会場は「街」

「はたちのはなし」発表会場のイメージは「街」。
このまちの、はたちのはなし です。

扉を入るとそこは入り組んだ通路。ホールの可動席を迷路のように配置して、街なかの路地のようにしつらえました。
路地には世界と茅野市の人口データや20年史、新成人アンケートまとめやワークショップの活動内容、20年前のグッズのあれこれを展示。そんな路地を抜けた「街の空き地」が発表の場です。

 ホール内はこんな感じ。通路を抜けた先の広場が、発表会場です。
世界と茅野市の20年史、人口データなどのコーナー。あれ、だれかいます。
 晴れ着からつくられた舞台衣装も展示。あでやか。
 新成人へのアンケートまとめを掲示。その奥ではワークショップのプロセスを紹介。
 1996年コーナー。
こちらが客席です。

「はたちのはなし」誰かに劇を見せてみる編[3日目]

「はたちのはなし」誰かに劇を見せてみる編[3日目]
2017年2月24日(金)25日(土)26日(日)
遊び案内人:柏木陽(NPO法人演劇百貨店代表/演劇家)

[3日目]
いよいよワークショップ最終日。15:30からの発表に向けて、やることがたくさんです!今つくっているものを確認して、展示作業・お昼休憩をはさみ、リハーサルしながらさらに創作をすすめ、いよいよ本番です。

 構成の確認。オープニング→新成人アンケートをとる前のイメージと実際の劇→新成人アンケートデータの「見える化」劇→新成人アンケートから想像する人物像の劇→「はたちについて」聞き書きの劇→就労支援施設のはたちの座談会劇→エンディング(自分自身のはたちのはなし)
創作を一時抜ける人たち(同日同時間に市民館で開かれているコンサートを見るため…!)もいるので、お昼休憩まで、発表場所につづく、ホール内の「路地」に、はたちにまつわるあれこれを展示。「今年20歳を迎える人の年表」=世界と茅野市の20年史を書き出します。大きな歴史、小さな歴史。
すすまない創作のことをさておき、展示内容が楽しくて夢中になる皆さん。もうすぐ発表、まだ創作の形が見えない。でもポジティブに楽しむ。すごい心の持ちようです。
世界から茅野市まで、人口動向などのデータも調べて掲出しています。生産年齢人口が…。
「ごっこ遊びをご一緒に」のツイッターでは、ワークショップの様子を実況していました。その内容を掲示。
https://twitter.com/ccc_gokko
いまのはたちが生まれた20年前、1996年のいろいろなグッズを持ち寄り、展示。ミニコンポからはJ-POP。テレビデオからサッカー中継。スーパーファミコン、PHS、プリクラ…。
お昼休憩をはさみ、リハーサル。このワークショップの説明をするオープニング。
 創作しながらすすめます。
そんなこんなで、もう本番間近!通した感じはだれもわからない。でも、これまで9日間の創作の過程があるから大丈夫、なのです!